もしも君が泣くならば

浪人時代の話です。

 

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これいい曲です。素直。若い。青春。高校。現在、周りの様子を窺いながら生きてる身分にとってかなり痛快。普段からこれぐらい言いたい放題ぶちまけて生きたいものです。懐かしい。

"人間なんて誰だって駄目なんだ"

少しでも人より上に上に行こうともがいている人が多いなあと感じています。自分もそうなりがち。でも結局これです。お互いに弱いとこ認め合って、肩組んで大声で歌うくらいが幸せ。

 

先日友人が銀杏BOYSなるバンドについて話していたので、ゲオでパパッと3枚くらい借りてきて聴いていました。

 

で、この曲です。以前聴いたことがありました。浪人中。11月の大学別模試の帰りにカラオケ行ったんですけど、そこで浪人仲間が歌ってました。

こいつがかなりの曲者なんです。はっきり言って天才です。ただの首都圏の私立中高一貫のガリ勉とは雰囲気が違って、スポーツも音楽もできて、映画とか本にも詳しくて、小説の中の登場人物みたいなスーパーマン。でも、天才であるが故に(?)こつこつやれないみたいで、東大理三に2年連続であと10点足りなくて落ちるようなやつです。それまで(理三を受けるにしては)ほとんど勉強してないのに。逆に言えば、してないから。10点というのは、二次試験の理科とか数学の大問0.5個分ですから、各教科であとちょっとずつ点を積み重ねればなんとかなるんです。彼くらいの地頭の人がそこそこ1年やれば軽く取れちゃうはずなんです。なんてったって彼はセンター倫政をセンター試験の3日前から始めてセンター本番で80点くらい取っちゃうんですから。

 

初めて会ったのは4月、予備校の前で寮の友人たちと会ったとき、そこに一緒にいた感じです。いきなり、「俺の名前当ててみぃ?」って言われたのを今でも覚えています。とにかくむちゃくちゃなんです。菅田将暉とか松田龍平みたいな髪型と関西弁のせいで、なんとなく藤原っぽいなと思って、藤原、って言ったら、「そんな高貴な名前やないで、〇〇や」って意地悪っぽく(いたずらっぽくはない)言われました。イキってたし、当初の印象はそんなによくなかったです。

その後はまあイヤな部分も見ながらも、すこしずつ仲良くなって(?)いって、模試の現代文の問題について議論したり、「The Great Gatsby」を薦められたり、と、割と話すようになりました。

 

で、秋の大学別模試です。河合塾だったか駿台だったかは忘れました。ただ、お互いに数学が葬式状態だったのでたぶん駿台です。とにかく、落ち込んでて、帰りが一緒になって、寮の最寄りのカラオケに行くことになったんです。

彼は自信屋で、批判精神旺盛なんです。少なくともそう見えます。でも、選曲も歌声もどこかロマンチストというか繊細なんです。Uverとかワンオクじゃないんです。久保田利伸とか尾崎豊なんです。そして、最後の最後で、「高校時代にバンドでやった曲や。」って言って、突然Going Steady とか銀杏BOYSを歌い始めたんです。歌詞がまっすぐなのもあり、彼の本当の姿のようなものを見たような気がして、ただただ茫然としていました。

要は、とても危うい部分のある自信屋なんです。普段は強がっていて、実際強いんですけど、本当は不安と戦っているんです。人知を越えた存在だと思っていたんですけど、実は悩める2浪の青年なんです。人間なんです。それがわかった瞬間、なんだかとても温かい気持ちになりました。ありきたりですかね。でも実際そうなんです。"人間なんて誰だって駄目なんだ"を地で行ってるんです。

 

彼はセンター試験で無難に92%くらい取って、東大理三に10点ほど足りなくてまたしても落ちました。東大の二次試験の数日前、寝る前に洗面所で会った時、「俺だめかもしれんわ。」と、ぽつりと言われました。そうか、としか言えませんでした。もっと勉強しとけばよかったんだよ、とは言えませんでした。だって、悲しいけどそれが彼の生き方なんですから。

 

 

彼は今年は大阪で浪人しているそうです。もちろん今年も東大理三を受けるそうです。もしも君が泣くならば、これを聴いてふと彼のことを思い出したので書き残しておきます。